2025.12.24
【勉強会レポート】登喜和納豆が考える「畑から食卓まで」
先日ムスビガーデンでは、1949年(昭和24年)創業の老舗メーカー・登喜和食品 代表の遊作さん、営業の村田さん、製造担当の甲田さんの3名にお越しいただき、
「畑から食卓まで」をテーマに勉強会を開催しました。
大豆の選び方や産地のこと、微生物をはじめ発酵の奥深さ、そして納豆づくりに込めた想いやこだわりまで、普段なかなか聞くことのできない貴重なお話をたっぷりと伺いました。
原料から製造、そして私たちの食卓へ。
ひとつひとつの工程に真摯に向き合う姿勢に、「食べものを選ぶ」ということの大切さを、改めて感じる時間となりました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大豆発酵食品について

「発酵」と一言でいっても、その背景にはさまざまな微生物のはたらきがあります。
善玉菌・悪玉菌といった単純な区分ではなく、無数の微生物が関わり合い、その“バランス”によって発酵は成り立っています。
登喜和食品さんでは、約2〜30年前から納豆菌そのものを東京の研究機関と共同で開発し、管理するという取り組みを続けてきました。
現在、製造しているすべての納豆に使われているのが、「東京納豆菌」。
日本には、宮城野菌・高橋菌・成瀬菌など、いくつかの系統の納豆菌があるといわれていますが、ただ「良い菌」を集めれば良い納豆ができるわけではないそうです。
菌にもそれぞれ性格があり、いろいろな菌が共存し、バランスが取れていることが何より大切。
それはまるで人間社会と同じで、優等生ばかりでは良いものは生まれない、というお話がとても印象的でした。
納豆菌は生き物。
その性質を壊さず、本来の在り方を大切にするためには、日々の繊細な管理と向き合い続ける必要があります。
また、「善玉菌・悪玉菌」という考え方自体も、実は人間の都合で決めているもの。
抗生物質も微生物から生まれ、私たち人間の体そのものも微生物の集合体によって支えられています。
目に見えない、千分の一ミリ、1ミクロンほどの世界。
その“小さな巨人たち”が命を形づくり、食べものを通して私たちを生かしている。
だからこそ、「何を食べるか」がとても大切なのだということ。
そこに、登喜和食品のものづくりの原点があります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大豆へのこだわり
使用している大豆は、主に北海道・十勝(帯広)産。
同じ大豆でも、畑作か転作(お米から切り替えた畑)かによって、味わいは大きく変わるといいます。
生産者が無理なく育てられることを大切にし、農薬の使用もできる限り抑えた大豆を選定。
青森県産の有機大豆「おおすず」なども、そうした考えのもとで使われています。
一方で、転作の大豆は糖質やたんぱく質が少なく、検査結果からも味わいが淡くなりやすいことが分かっているそうです。
微生物と大豆は、切っても切れない関係。だからこそ原料選びにも、深いこだわりが込められています。
代表の遊作さんは、前職で農家の暮らしに関わる中で、農業の厳しさを身をもって実感。
家業である納豆屋を継ぐにあたり、「農家さんから直接、大豆を買いたい」「国産大豆で納豆を作りたい」という想いを持つようになったそうです。
当時は、国産大豆の納豆は売り先がほとんどなく、農薬や虫害への対応も大きな課題でした。
それでも1999年、すべての大豆を国産へ切り替え、今の登喜和食品のものづくりへとつながっています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
登喜和食品が伝えたいこと
― 国産大豆100%、農家さんと歩むものづくり ―
登喜和食品さんが掲げる6つの約束は、とてもシンプルで力強いものでした。
―――――――――――――――――――――――
1. すへての製品に、厳選・吟味した国産大豆を100%使います。
2. 遺伝子組み換え大豆は、一切使いません。
3. 消費者や生産農家との信頼関係を大切にします。
4. 培養履歴の確認が可能な納豆菌を使います。
5. 納豆の容器に、稲ワラ、経木を使い続けます。
6. タレやカラシに化学調味料、保存料、着色料は使いません。
―――――――――――――――――――――――
特に印象的だったのは、「畑から食卓まで。日本の農業と食生活を応援したい」という強い想い。
国の根幹である農業を担う人たちが報われなければ、後継者は育たず、ますます衰退していく。
納豆づくりを通じて、微力でも日本の農業を応援したい。
だれが、いつ、どこで、どのようにして栽培した大豆なのか。
トレーサビリティを確立することを、食の安全の基本と考え、自然界の厳しさと共存共栄するために、生産農家と協力し合うことを心がけています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
納豆ができるまで
―――――――――
【1日目】
① 原料大豆を計量・洗浄
② 約20時間浸漬
―――――――――
【2日目】
③ 蒸煮
なるべく時間をかけ、低圧でじっくりと蒸し上げます。農家さんが一生懸命作ってくれた大豆をいかに美味しく仕上げるためにこだわります。
④ 納豆菌を接種し、ホッパーへ入れ替え
納豆菌は熱に強く、100℃でも生きられる菌。
この工程で雑菌を抑え、納豆菌が優位に働く環境を整えます。
⑤ パック詰め
納豆のパックに、大豆・タレ・からしも充填していきます。
この時点では、まだ「煮豆」の状態。
製造記号の印字後、金属探知機・重量チェッカーを通過します。
⑥ 室(むろ)で発酵
温度管理された室に入れ、発酵を進めます。
ここで、あの「ねばねば」が生まれます。
―――――――――
【3日目】
⑦ 発酵を止め、低温熟成へ
室から出して発酵をコントロールし、
10℃の冷蔵庫で約24時間、低温熟成発酵。
この工程によって、
納豆の旨みや糸引きがさらに引き出されます。※発酵終了時、納豆の品温は約50℃。10℃の冷蔵環境でも、ゆるやかな発酵は続いています。
―――――――――
【4日目】
⑧包装(自動化された包装機で仕上げ作業)
⑨出荷
―――――――――
大豆と納豆菌、水しか使っていないからこそ奥が深い。同じことをこなしていても同じものが出来上がらない。
菌と会話するように、その日の状態を見極め、理想の仕上がりを目指していく。そうお話する、甲田さんの真摯に向き合う姿勢から熱意が伝わってきました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ひきわり納豆の違いについて
登喜和の納豆は、大手メーカーとは違い 必要な分だけ自社で大豆を挽き割る ところから始まります。
ポイント1
原料大豆について
十勝の息吹大粒納豆に使用している大豆を贅沢に挽き割って、ひきわり納豆として使用。
ポイント2
挽き割り方法について
通常、挽き割り専門業者にて大量一括で挽き割るところを、自社にて大粒の大豆を必要な分だけ挽き割る。
挽き割ってしまった大豆は酸化が進み、後になればなるほど美味しさが損なわれます。なので、登喜和の納豆は毎回美味しいひきわりが提供できます。
ポイント3
蒸煮について
丸大豆は表皮がついた状態なので、釜で圧をある程度かけても大豆の中の旨味が外に逃げません。(圧をある程度かけた結果、大豆は茶色っぽくなるのが特徴です)ひきわり納豆は大豆を割った状態で表皮がないものに圧をかけるため、かけ過ぎると大豆の旨味が外に逃げてしまいます。登喜和のひきわり納豆は色がとても白いのが特徴で、この白さは旨味がなるべく逃げず、それでいて生煮えにならないギリギリの製法をしています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
人気商品「十勝の息吹」シリーズ
ムスビガーデンでも人気の 「十勝の息吹」シリーズ。
―――――――――
1. 安心・安全性の高さ・・・農薬・科学肥料の使用量半分以下におさえた特別栽培大豆使用
2. 大豆がおいしい・・・肥沃な十勝平野で育った大豆は、同じ品種でも大豆の旨さが段違い
3. 手間をかけた製法・・・美味しい大豆を生かすのは納豆メーカーの役割。
―――――――――
なかでも、思わず「ハッ」とさせられたのが、生産者さんの名前を納豆の包装にまできちんと記していることでした。
多くのメーカーが産地名のみを記載するなかで、あえて生産者個人の名前まで明記するのは、顔の見える関係を大切にしているからこそ。
つくる人の想いが伝わり、農業を次の世代へとつないでいけるように。若い生産者さんにも継承してもらいたいという、登喜和食品の強いこだわりが感じられました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「タレ・からし」まで絶品!
今回あらためて驚いたのが、付属品の“タレとからし”へのこだわり。
〈醤油〉
● 醤油は、老舗蔵の天然醸造のものブレンドして使用。納豆の味を活かすよう、かつお風味をベースとしたキリッとした味わい
●さらに、質感をワンランクアップするために、料理酒を隠し味に
〈からし〉
● マスタードは練りからし・あらびき・フレンチの3種類をブレンドし「ツンとこない程度の辛味と持続性」を重視。
「タレ・からしは主役ではなく、納豆のおいしさを引き立てるための存在」
付属品へのこだわりが強く、タレ・からしまで本格派で。からしは粒々した食感も楽しく、ソーセージにつけても美味しいですよ!と教えていただきました!!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
勉強会を終えて
今回の勉強会を通して感じたのは、登喜和納豆は「発酵食品」である以前に、
ヒトの手と微生物、そして農家さんの想いが重なって誕生した賜物だということ。
目に見えない菌と向き合い、その日の状態を感じ取りながら仕上げていく製造の現場。
大豆の産地や育ち方、生産者さんの顔が見える原料。
そして、畑から食卓までをつなぐ取り組み。
どれも、効率だけを追い求めていては、決してたどり着けないものばかりでした。
「何を使っているか」だけでなく、
「誰が、どんな想いでつくっているのか」。
その背景を知ることで、いつもの納豆が、少し特別な一品に感じられます。
登喜和食品さんの納豆づくりには、
これからの食と農業を考えるうえで、私たちが大切にしたいヒントが、たくさん詰まっていました。
ムスビガーデンとしても、
この想いや取り組みを、お客様のもとへ、そして日々の食卓へと大切に“むすんで”いきたいと、改めて感じた時間でした。
貴重なお話を、本当にありがとうございました。